婦人科
Gynecology
婦人科の特色
女性特有の不調かかえ込まずに伝えて
婦人科良性疾患に対する正確な診断とより適切な治療方針の決定
婦人科内視鏡下手術の対象となるのは、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫などの婦人科良性疾患です。一般的に、これらの疾患を診断すること自体はそれほど難しくはないのですが、治療(手術)の前に正確に評価すること(手術を行う場合の難易度や子宮内膜症の重症度、癒着の有無など)は容易ではありません。より良い治療法を選択するためには、現在の病状、病態を十分に把握しておくことが重要です。
子宮筋腫や子宮内膜症の保存手術を施行した場合の再発率はかなり高く、卵巣チョコレート嚢胞の手術をした場合には術後3年で約30~50%が再発すると言われています。ただ単に手術をするだけで術後に適切な治療やフォローをしていなければ、数年後には再発して手術する前よりも複雑な状態になっていることもあり得ます。
そこで、私たちは、患者さまのライフスタイルや人生設計などを考慮しながら、治療法を検討し、手術をする場合には、その時期や術式、術後の薬物治療(不妊症の場合には術後の治療内容や計画)についても十分検討しています。
1)子宮筋腫症例では子宮内膜症は見逃されやすい!―適切な術前診断をめざして―
2)Recurrence of ovarian endometrioma after laparoscopic excision.
3)Postoperative oral contraceptive exposure and risk of endometrioma recurrence.
より高度で安全な腹腔鏡下手術の施行
腹腔鏡下手術の利点は傷が小さいことでしょうか?傷が小さければ、手術の内容自体は少々雑であっても許されるのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。もっとも大事なことは、目的とした手術操作が確実に行われることです。私たちは、腹腔鏡下手術は単に傷が小さいだけではなく、腹腔内臓器や病変を拡大して観察することで細かな手術操作ができるところが大きく優れていると考えています。私たちは、傷が小さいだけではなく、繊細な操作による、より身体に優しい(出血が少なく、できるだけ術後癒着のない)手術を目指しています。
適切な術後フォローと診療へのフィードバック
手術の技術も薬物治療も常に進歩しています。私たちは、常に最善の治療を提供するとともに、その診療の結果を次の診療へフィードバックしていく必要があると考えています。当院で手術をした方については、原則としては紹介先で経過観察をしていただきますが、予後については調査して、エビデンスを確立していくよう努力していきます。
医師紹介
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副院長兼婦人科部長
松本 貴
まつもと たかし
専門分野
子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫・卵巣嚢腫などに対する腹腔鏡下手術・難治性子宮内膜症性疼痛、慢性骨盤痛に対する包括的治療
担当診療科
婦人科
資格・学位・経歴
医学博士
日本産科婦人科学会専門医
日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医・技術認定医技術審査委員・評議員
近畿産婦人科内視鏡手術研究会理事長治療に対する座右の銘
以下の3項目が分かりやすい手術を重視しています。
・精細な手術手技
・術者の意図(チームワーク)
・術野が明るい(ホワイトサージェリー)婦人科手術のエキスパートとして、20年以上にわたり、数多くの患者さまの治療に携わってきました。患者さまのQOL向上に貢献できるよう、常に最新技術の習得に努めています。これからも、患者さんが安心して治療を受け、笑顔で退院できるよう、全力でサポートいたします。
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医長
細川 有美
ほそかわ ゆみ
専門分野
腹腔鏡下手術・不妊内分泌
担当診療科
婦人科
資格・学位・経歴
医学博士
日本産科婦人科学会専門医
日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医
日本内視鏡外科学会内視鏡技術認定医(産科婦人科)治療に対する座右の銘
丁寧に、わかりやすく伝え、誠実に治療・手術をいたします。
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医員
相本 法慧
あいもと のりとし
担当診療科
婦人科
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婦人科医員
津田 洋之介
つだ ようのすけ
専門分野
婦人科一般
担当診療科
婦人科
治療に対する座右の銘
身体への負担はできるだけ少なく、生活の質の向上に寄与できるような治療を目指しています。
担当医表
内科
上部へ移動午前/午後 | 月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日(2・4週) |
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午前 8:30~11:30 |
小阪 佳恵 (糖尿病・内分泌) |
美内 雅之 (糖尿病・内分泌) |
南 雄三 (内科) |
美内 雅之 (糖尿病・内分泌) |
美内 雅之 (糖尿病・内分泌) |
交代 |
南 雄三 (内科) |
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午後 12:30~15:00 |
美内 雅之 (糖尿病・内分泌) |
南 雄三 (内科) |
山木 香名 (糖尿病・内分泌) |
井上 智香子 (糖尿病・内分泌) |
山木 香名 (糖尿病・内分泌) |
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田邊 和也 | 宮武 明彦 (呼吸器) 診察13:30から |
桑迫 崇裕 | 南 雄三 (内科) |
北島 孝一 (1・3・5週) 倉敷 有紀子 (2・4週) |
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宮武 明彦 (呼吸器) |
←左右にスライドすることができます→
診療担当表はあくまで予定です。
急な手術や医師の都合により、休診になることがありますので、事前にお電話にてご確認頂きますようお願いいたします。
当科で施行している腹腔鏡下手術
より高度で低侵襲な腹腔鏡下手術
腹腔鏡下手術は、体腔内で全ての手術操作を行うもの(腹腔鏡下手術、いわゆる体内法)と腹壁に3~5cm程度の切開を併用して、体腔外からの手術操作を併用する腹腔鏡補助下手術があります。
私たちは、傷の大きさや体腔内での手術操作にこだわっている訳ではありませんが、腹腔鏡下手術の利点は内視鏡によって臓器を拡大視して繊細な手術手技を行うことにあると考えています。腹腔鏡の技術は、現在、大きく進歩しており、当院ではほぼ全例に対して(体腔外からの手術操作を行わない)腹腔鏡下手術を行っています。
卵巣予備能に影響を与えない卵巣チョコレート嚢胞核出術
卵巣チョコレート嚢胞を核出する場合、卵巣の正常組織や血管を傷つけ、術後の卵巣機能を大きく損なってしまう可能性があります。そのような問題点を解決するため、当院では、希釈バソプレシンを嚢胞に局注して、繊細な手術操作にて核出するテクニックを開発しました。これにより、卵巣予備能にできるだけ影響を与えない卵巣チョコレート嚢胞の核出が可能になっています。
両側の嚢胞(とくに大きなもの)、多房性嚢胞、嚢胞摘出既往例では、術後の卵巣予備能低下のリスクが高いと考えられるものがあります。このような場合には、嚢胞内容の吸引だけにとどめて、術後に不妊治療や薬物療法を行なっていただくことがあります。
妊孕能の温存を目指した腹腔鏡下子宮筋腫核出術
子宮筋腫は良性腫瘍であり、自覚症状がなく筋腫があまり大きくない場合は治療をする必要はありません。しかし、不妊や貧血などの症状がある場合には手術治療を考える必要があります。子宮筋腫は再発しやすいので、妊娠時期を考慮して手術をするタイミングを決定したほうがよいでしょう。私たちは、具体的に妊娠を考慮している患者さんに対しては、腹腔鏡下子宮筋腫核出術を施行しています。なお、直径10cmを超える場合、多発性で子宮が大きい場合、筋腫が変性している場合には、手術適応を決める際に注意が必要になることがあります。
大きな子宮や癒着症例に対する腹腔鏡下子宮全摘術
子宮筋腫、子宮内膜症や子宮腺筋症に対する根治的な手術は子宮全摘術です。子宮筋腫核出だけではなく、子宮全摘術も腹腔鏡下で行うことが可能です。近年、腹腔鏡下手術機器と技術の進歩により、良性子宮疾患の90%以上に対して腹腔鏡下子宮全摘術を施行することが可能です。1kgを超えるような大きな子宮や、子宮内膜症の合併や手術既往による癒着症例に対しても手術をすることが可能ですが、 手術適応は内診やMRI、超音波検査にて注意深く検討の上、決定しています。
また、平成26年4月米国食品医薬品局(FDA)が電動モルセレータの使用を推奨しないという安全性通知を発表しました。FDAによれば、術後に想定しなかった子宮肉腫などの悪性疾患が発見される確率は0.28%としており、電動モルセレータ使用後の播種例があることも明らかになっています。(日本産科婦人科内視鏡学会のアンケート結果では約1000例に1例程度)これを受けて、当院では平成26年7月よりアイソレーションバッグ(手術用の大きな袋)などを使用して腹腔内に閉鎖空間を作り、電動モルセレータで子宮(もしくは子宮筋腫)を細切除去する方法を開発し、施行しています。これにより腹腔内に腫瘍を播種する危険性なく安全に細切除去することが可能となりました。
電動モルセレータについての当科における見解はこちら
骨盤痛を伴う難治性子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術
子宮内膜症が重症化すると、しばしば月経痛のみではなく排便痛や性交痛、慢性的な骨盤痛などの症状が強くなります。そのような患者さまの腹腔内では卵巣チョコレート嚢胞の他に、ダグラス窩が完全閉塞し(子宮や卵巣、直腸などが強く癒着する)、仙骨子宮靭帯や腟壁に硬結(深部子宮内膜症)を形成していることがあります。
重症子宮内膜症に対しては、従来は開腹手術によって癒着剥離と卵巣チョコレート嚢胞の核出が行われていました。当院では、癒着剥離や卵巣チョコレート嚢胞核出の他に深部子宮内膜症の切除や子宮腺筋症の核出を腹腔鏡下手術で行っています。
腸管・膀胱・尿管などの稀少部位子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術
子宮内膜症は、まれに腸管や膀胱、尿管などへ浸潤することがあります。通常、これらの子宮内膜症に対しても薬物治療で症状を改善させることができますが、妊娠を希望する場合や不妊症、狭窄が改善しない場合、薬物治療に抵抗性で症状が改善しない場合などに他科と共同で腹腔鏡下手術を行っています。
学会発表
2019年1月19-20日 第40回日本エンドメトリオーシス学会学術講演会
若年子宮内膜症および閉経期の子宮内膜症診療のポイント―QOL 向上のために―
○佐伯 愛、岩井 夏実、西田 浩孝、岡本 和浩、 奥 久人、松本 貴
鼠径部子宮内膜症に対する治療経験
○佐伯 愛、岩井 夏実、西田 浩孝、岡本 和浩、松本 貴
ダグラス窩深部内膜症の術前診断に対する経腟超音波断層法所見の検討
○西田 浩孝、松本 貴、岩井 夏実、岡本 和浩、佐伯 愛、奥 久人
2019年2月2-3日 第41回日本産婦人科手術学会
MRIゼリー法による子宮頸部筋腫に対する術前評価の有用性
○松本 貴、岩井 夏実、西田 浩孝、岡本 和浩、佐伯 愛
2019年4月11-15日 第71回日本産科婦人科学会学術講演会
MRIゼリー法による子宮頸部筋腫に対する術前評価の有用性
○松本 貴、岩井 夏実、西田 浩孝、岡本 和浩、佐伯 愛
The microsurgical TLH -ダグラス窩完全閉塞例に対する逆行性子宮全摘出-(ビデオセッション)
○松本貴
2019年5月16-18日
5th Congress of the Society of Endometriosis and Uterine Disorders 2019 Prediction of pouch of Douglas obliteration in women with suspected giant uterine fibroids using a new real-time dynamic transvaginal ultrasound technique: the wave sign. ○Hirotaka Nishida
(○は発表者)
講演・特別講演
2019年2月23日 ラパロスコピストのための婦人科骨盤解剖勉強会
『後腹膜腔の骨盤解剖 私がTLHをしているときに考えていること』
松本貴
2019年3月23日第16回宮崎婦人科内視鏡研究会
『The microsurgical dissection -術者は何を観ているのか?-』
松本貴
2019年4月11日 第71回日本産科婦人科学会学術講演会(ランチョンセミナー)
『TLHでの技術認定医取得から高難度症例拡大へのステップ』
松本貴
2019年5月11日 愛知婦人科内視鏡手術勉強会2019 ~安全にTLHを行う知識・技術を知る~
『The mircosurgical dissection for TLH -子宮周囲はどうなっているのか?-』
松本貴
2019年5月18日 第9回大阪女性医学懇話会
『子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術』
松本貴
2019年5月31日 とちぎ産婦人科内視鏡研修会
『~鉗子、パワ-ソ-スの選び方・使い方~』
松本貴
2019年6月15日 北海道子宮内膜症・子宮腺筋症セミナ-2019
『The radical mircosurgical dissection -術者が観ている子宮周囲の解剖学的構造-』
松本貴
2019年6月16日 近畿産婦人科学会(教育セミナー)
『The radical microsurgical dissection for severe endometriosis -ダグラス窩閉塞と深部子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術-』
松本貴
2019年6月29日 第32回日本小切開・鏡視外科学会(ランチョンセミナー)
『安全を確保した腹腔鏡下手術の限界と挑戦』
松本貴
座長
2019年1月20日 第40回日本エンドメトリオーシス学会学術講演会
ワークショップ3 子宮内膜症手術―困難症例への挑戦
松本 貴
雑誌等掲載情報
主な医療機関の婦人科内視鏡治療実績(讀賣新聞2013年7月7日掲載)
お問い合わせ先
代表電話番号
06-4795-5505受付時間
9:00~12:00/13:00~17:00
休診日
日曜日、祝日、第1・3・5土曜日、年末年始(12月29日~1月3日)